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ポンコツ凡人素人による香水のたわ言の書きつけ/Twitterの寄せ集め

Fleurs et Flammes/ Antonio Alessandria

アントニオアレッサンドリアのフルールエフラム(花と炎)

初めは淡い柑橘と柔らかな新芽のグリーンが表面に、その下で燻製ハムをよりスモーキーに薬っぽくした動物的に感じられる香りが主張

柑橘とグリーンは透明感のあるリリーに変化していき、追って生臭くメタリックなグリーンがその上に重なっていく

次第にメタリックなグリーンが目立ち始め、同時に燻製は主張が控えめに

気がつくとリリーはよりスパイシーでグリーン感の強いカーネーションに変化しており、その後ろに淡く残った燻製がカーネーションの尖った部分を落ち着かせていた

この部分は意外にもカーネーション×レザーの古典香水を連想させる

少しすると、メタリックなグリーンの中にフルーティなローズの気配が感じ取れるようになった

ローズは段々と密度の高い靄のように広がっていき、メタリック要素の刺を飲み込みながら、カーネーションに重なってフルーティなニュアンスを増していく

よく嗅ぐとオレンジの甘さも混じっているように感じた

最後はキンと響く軽やかなアンバーウッディ香を背景に、フルーツと花と燻製のニュアンスを含んだムスクが長く肌付近に漂った

アーモンドミルクは感じなかったが、花と燻製の中に隠れていたのかもしれない

調香師によると、幼い頃の聖ロザリア祭の1日の思い出が着想源とのこと

https://www.fragrantica.com/news/Pitti-Fragranze-2015-an-interview-with-Antonio-Alessandria-7154.html

その光景を写実的に表現したというより、時空間が歪み、花が花火に変化する夢が香りに落とし込まれている(広告ビジュアルも花と花火が重ねられている)

私的な思い出を再構成した結果、部分的であれ古典香水のひとつの「型」に近づくというのは、私的/公的の二項対立とは異なるあり方で興味深いと思った

★おまけ

Miguel Matosもこの香りをフローラルアニマリックの現代版と指摘していた

https://www.fragrantica.com/news/Antonio-Alessandria-s-Fleurs-et-Flammes-Masterpiece-of-Life-and-Death-7177.html

彼の場合はリリーのインドールを身体の腐敗臭と絡めて語っている

私の好きな調香師Euan McCallがアーティストと司法人類学者とコラボレーションしたThanatosを想起した

https://www.ericfong.com/albums/thanatos/

★おまけ2

聖ロザリアはペストの大流行から人々を救ったという

香りを病に抗うために用いてきた歴史もある

聖ロザリアを表現しうる香り(ちなみに聖ロザリアを描いた絵画にはローズの花冠とリリーが描かれているものが複数ある)を今纏うのは、ある種の「病避け」または「祈りのための香り」のように感じた