Fantosmia/ Jorum Studio
Jorum StudioのFantosmia
初めサフランが力強く拡散し、鼻が慣れるとその後ろに隠れていたフルーティで甘くスパイシーなナツメグ・ペッパー・カルダモン様のスパイス群が前面に出てきた
カカオのような香ばしいナッツの質感と風味が織り込まれている
その影に熱を帯びたタイヤ香が薄く透けて感じられた
タイヤの中に微かな鋭い金属香が見え隠れしている
次第に表面のスパイス群は混じり合い、滑らかな液体のような質感で主張を強めていった
タイヤや金属は感じられなくなり、代わりにジメジメしたベチバーが影として全体の暗さと深みを増している
重さはあまりなく、空気に溶け込んだような軽さが不思議
その後、ベチバーにシソの独特なハーブ香やサフランが混じっては消えていった
同時に、ザラザラと粒子感がありスモーキーな木が現れ、ベチバーと重なりながら全体の土台としてムスクのように浮いて広がる
表面のスパイスは、引き続き強く滑らかで甘くスパイシーに香り、時々ローズなどの花が感じられた
さらに経つと、奥に艶やかなインク香が、空気のようなベチバーなどと異なり背景を塗りつぶすように香り始める
仄かに香ばしい木も混じって感じられる
甘く花と果実のニュアンスを含んだスパイスは、ベチバーなどの空気に少しずつ溶けて馴染み、強気なファッションフレグランスのような趣になっていった
次第にスパイスは空中に薄く広がり気配程度に
代わりに、スモーキーな木から香ばしい木、明るく香ばしいタバコへと移りながら、木とそれを取り巻き拡張するウッディムスクの合成香料と思われる層がメインになる
最後はそのまま長く肌に残り、少しずつ淡くなっていった
個性と気軽さのバランスがいい
甘さとかっこよさのバランスも個人的に好ましく、トレンチコートに合わせたい
コンセプトも興味深いのだが、読み込みきれていないのでもう少し考えてみる
物理的な発生源がなく、かつ自分にとってよそよそしく感じられる「幽霊香」/香りの物質性と不定形/「olfacticality」(theatricalityとの関係は?)