Phloem/ Jorum Studio
Jorum StudioのPhloem、いつにも増して好みな香り方をしたため書き残しておく
ピーチ様のフルーティ要素は薄くココナッツよりあっさりしたクリーミーさのチュベローズにベリーの甘酸っぱさを足したクリーミーフルーティフローラルの上に、ガツンと濃い塩水の汗ばんだ肌のような塩気が重なってスタート
塩水はムスクの高密度な空気で包まれており、塩気は粒子の細かいクミンのようにスパイシーに感じた
少しずつ濃い塩気は薄まってアンバーグリスの塩感と磯っぽさへ変化し、代わりに感じられるようになった「化学っぽい」軽さが潮風のよう
その下では引き続きクリーミーフルーティフローラルが続いている
潮風は次第に針葉樹のアロマティックさをチラつかせ始め、わずかな間だけワサビのような刺激が顔を出した
下を流れるベリーはパッションフルーツの明るく軽く熟れた果実へと変化し、フルーティフローラルは微かに重さ厚さを増している
ワサビが去るとアンバーウッディ調となり全体が微かにスモーキーに
さらにアンバーはセサミの焦げたような香ばしさと軽い苦味に変化し、アンバーグリスと混じり合っていった
同時にチュベローズはシトラスを含む爽やかなジャスミン・パッションフルーツはストロベリーになり、アーモンドミルクのほの甘い滑らかな層に重なってアンバーグリスと香ばしさの下を支えている
その後ジャスミンは空気に溶け込み、部分的に抜き出すと苺に砂糖とミルクをかけたような香りに感じられた
その上では塩気がぶり返し、メタリックな潮の刺激と粒子感、時々セサミの香ばしさが波のように揺らいでいる
いつの間にか下を流れる苺ミルクは甘く優しいクマリンとヘリオトロープに変化していた
最後に近づくにつれて塩気と甘みはセサミとアンバーを介してぎこちなくも溶け合い、アンバーウッディに樹脂っぽい甘さ+アンバーグリスとなって圧力を弱めていった
公式サイトを見ると、たしかに感じられたジャスミンもチュベローズも香りの構成要素にはなく、それらしき別のホワイトフローラルもない
載っている聞き慣れない植物の詳細を調べていくと、ハニーサックルはジャスミン、メドウスウィートはピーチなど、ゴースはココナッツ…とそれぞれ共通する香気成分を含んでいるよう
あくまで素人の推測だが、それらを嗅ぎ繋いでいくことで、ジャスミンやチュベローズ(の幽霊)が認知されたのではないか
調香師Euan McCallは、過去作などから察するに、ある植物を成分単位に分解し、一要素を突き抜けさせたり分解された他の植物の成分と組み合わせたり、ある意味機械的にパズルを解くようにして違和感や不可思議さを取り込みながら香りをつくる傾向があるよう(故に私は彼をマッドサイエンティストと呼ぶ)
だから意図的な幽霊である可能性は十分あるように感じる
そう考えると、彼がPhloemをassemblageと呼ぶのは、甘さと塩辛さの組み合わせであると同時に、香気成分単位での寄せ集めだからとも読める
ちなみにPhloemはNectaryとペアリングされており、Nectaryは私の肌だとローズとウードとアニマルがメイン
ローズとウードとアニマルに、Phloemのアンバーグリスとベリーとアンバーウッディフローラルとは、どこかで聞いたことがあるような組み合わせだと気付いた
まるでふたつのパズルのピースが噛み合いひとつの香りが出来上がるよう
こんなところにも彼の計算の跡が見えて、怖くておもしろいと思ってしまう