War and Peace/ Areej le Doré
Areej le DoréのWar and Peace、端的に書くと感動した
最初に鼻に届くのはこっくりパウダリーでマットなアイリスで、すぐにスモーキーでキャラメルを使ったヨーロッパの伝統的粉物お菓子のようなアンバーが追って重なる
次第にアイリスが弱まりながらアンバーが溶けとろみとダークな強い甘さが出てきた
アンバーの陰に隠れてダークチョコレートのような深みのあるパチュリも感じる
さらにアンバーの煙の奥に柔らかなローズが香っていることに気づき、ローズが強まると同時に下からほんのり甘く空気をたっぷり含んだクッションのように分厚いムスクが全体を持ち上げていく
音楽でいえばサビのような高揚感
段々とアンバーの中からレザー調の濃いスモーキーさが主張し始め、アンバーの甘みは奥へ退きつつもプルーンのように凝縮した甘みがチラチラと覗いている
レザーの中に感じるカストリウムは初めほわっとした動物の毛並みくらいだったのが時間と共に排泄物系臭みとなり本気を出してきた
シベットも混じる
カストリウムとシベットの動物が去るとスモーキーな中に樹脂の甘さを秘めたアンバーレザーとなり、付けてからだいぶ経った今もゆったりと揺らぎながら香っている
1プッシュで自分の周りの空気の色を変えるような香り方のため、アンバーレザーに包まれてたゆたうような気持ちよさ
時々動物が蘇ることも
纏いながらワーグナーのオペラを観ているときのような壮大な別世界へのトリップ感があり、思わずワーグナーの音楽を聴き始めた
西欧美学における香りを調べていると、どうしても視覚と聴覚に対して嗅覚は下に置かれがちなのだが、「香水」の作品としての力とポテンシャルの高さを実感して心励まされた