incidents

ポンコツ凡人素人による香水のたわ言の書きつけ/Twitterの寄せ集め

Nueé Bleue/ Maison Violet

メゾンヴィオレのニュエブル

初め、ベルガモットとレモンの明るく爽やかで軽やかな苦みのある柑橘が、たっぷりのホワイトムスクの空気に散りばめられて肌あたり柔らかく広がった

すぐに新鮮な野菜のニュアンスとヴァイオレットのパウダリーさを含むアイリスがムスクの中から溶け出して混じり合っていく

アイリスに沿うように明るいジャスミン調の花が一緒に流れているのも感じた

明るい柑橘を柔らかく保ちながら、アイリスとムスクはホロホロと崩れそうに繊細な砂糖菓子様の甘さとともにふんわりと広がっていく

時々香るカーネーションらしき艶のあるスパイシーな花が全体の印象がボケるのを防いでいる

アイリス・ムスク・柑橘&ジャスミンがゆるやかに続き、次第に軽やかで香ばしくスパイスを含んだサンダルウッドがムスクとともに土台部分で目立つようになった

その後サンダルウッドの印象を強めながら、花・木・ムスクがふわふわと空気のように重力を感じさせることなく、意外にも長い時間漂っていた

元祖ヴィオレブランド最後の香りを古典的コロン風に読み替えたこの香りは明確に「終わりと始まり」を感じさせるもので、CYCLEの発表を受け改めてこの香りの重要性を再確認した

考えてみればCYCLEは詰替可能という環境配慮の観点からの「循環」でもあるし、(古典や過去作等の)「再解釈」の意味も読める

「環境」はある意味流行のテーマのひとつだが、ブランドの歴史や過去作などの文脈と絡めたコンセプチュアルな提示に思わず舌を巻いてしまった

恐らくアンジェリカへの注目にも意味があるのだろう

彼らの繊細に軽やかに意味深に革新を進めていく手つきは、思わず惹きつけられてしまう魅力があると思う

SONG OF AUBRAC/ St. Clair Scents

St. Clair ScentsのSONG OF AUBRAC

初めベルガモット・レモン系の明るい酸味が柔らかく広がり、追ってビターオレンジの果実感が重なっていった

ビターオレンジはオレンジブロッサム由来かも

付ける量が多いと、ナルキッソスのくすんだグリーン要素が下からじわじわと滲み出すように初めから力強く香る

少しすると、オリスのクリーミーで淡い甘さを硬くドライにしたような白い香りが奥に感じられるようになり、地塗りとして全体の質感を変えていった

過去の香りの記憶と公式の香調から察すると、ある種のアンバーグリスではないかと思う

ディアタン様のヘイとムスクの間のような香りも混じって感じられる

前面ではナルキッソスのグリーンと艶やかでタバコのような渋さ、精製前のハニー様の雑味を含む甘さが際立ち、冷めた温度感でしばらく続いた

次第にナルキッソスの周辺を柑橘寄りでインドールの弱いジャスミンと明るく軽やかなイランイランが包み込み、ナルキッソスを増幅させながら優しさを足していく

意識をするとブラックカラント様の暗くフルーティ&グリーンなニュアンスが感じ取れることも

ナルキッソスが弱まると、ジャスミンとイランイラン、オレンジブロッサムが目立つようになった

生花のように生き生きした質感で、華やかながら角の取れた香り立ちがこのブランドの他の香りにも共通している

段々と花は遠ざかり、アンバーグリスとディアタンが柔らかく控えめな甘さとハーフマットな質感を加えながら、サンダルウッドが香ばしく滑らかに肌の近くを流れるように

仄かにナルキッソスのグリーンやイランイランの南国調の青さが見え隠れしている

最後はそのまま淡く長く肌付近を漂い、消えていった

Le Sillage Blanc/ Dusita

Dusitaのルシアージュブラン

最初から勢いよく広がるのは、粒子が細かく特有の刺々しさが控えめなガルバナムと、新鮮な緑茶の葉のように清々しいアルテミシア

よく嗅ぐとオレンジ系の柑橘果物香が混じっており、仄かに甘い

少しすると、ザラついた渋苦いレザーがガルバナムの影のように後ろで香り出す

ガルバナムとアルテミシアに混じって微かにお茶っぽいジャスミンのニュアンスが感じられたあと、ガルバナムが残り、クリーンでツンツンしたところのないムスクを含むたっぷりした空気の中で拡張されるように香った

レザーには軽くオレンジブロッサムが重なり、どこか色気を帯びているように感じられる

その後湿った深みのあるパチュリがレザーの背景に現れ、追って重なるダスティなモスと共に存在感を強めていった

全体ではモスとレザーを中心にガルバナムのグリーンな苦味を表面に散りばめているようなバランス

時間の経過とともに、モスとレザーはさらに深みとしっとりした色気を持つ湿度を増していく

最後はパチュリの深い甘みが強く出たのち、ガルバナムとレザーの苦みが長く残った

着想源となったバンディはムスクが動物的・ダークだが、こちらはクリーンで明るく、全体の雰囲気を現代的に傾けている印象

私の中では圧倒的に早朝の白い日の光を連想させる香りで、本能的に心が安らぎ好ましいと感じる

個人的なことだが、私の家のカーテンは軽く日の光が透ける自然な肌触りの素材で、色はほんの少し雑味の混じった白、ベッドは窓際にある

天気のよい早朝に目を覚ますと、視界に入るのは白い天井と白いカーテン、透ける白い光だけの柔らかな白い世界で、この香りが想起させるイメージはこの景色に近い

Under My Skin/ Francesca Bianchi

フランチェスカビアンキのアンダーマイスキン(under my skin)

最初一瞬柑橘要素が感じられ、すぐにアロマティックなハーブ香へ滑らかに移ろっていった

その下では仄かにバニラの甘さ・トンカの柔らかさを含むこっくりしたサンダルウッドとスモーキーな樹脂、クリーミーなオリスが安定して流れている

ハーブは次第に遠ざかり、代わりに粒子の細かいペッパーとナツメグが木・樹脂・オリスの上で上品にヒリヒリとスパイシーに香るように

その後古典レザーシプレで感じられるような渋く苦く軽くザラついたモス・レザーと軽くスパイシーで艶のあるカーネーションが重なり、ローズがハニー調の甘さをプラス

ローズはハニー調の甘さと控えめな熟れたフルーティさを伴いながら、次第に前面で香るようになった

広く拡散して鼻に届くのは滑らかクリーミーなオリスとサンダルウッドで、少しずつバニラが強くなり甘味を増していく

カーネーションとモス、レザーは樹脂とムスクのクッションに包まれて柔らかな質感に

しばらくフルーティ・ハニー・ローズの群やカーネーション・モス・レザーの群、オリス・サンダルウッド・バニラの群が前に出たり後ろに隠れたりを繰り返しながら揺らいでいた

最後に近づくと、SMNの時代の「香水」風スパイスとサンダルウッドのスパイシーな部分、ドライなアンバーグリスが目立ってくる

安定してクリーミーなオリスが全体の下を流れており、バニラや樹脂、トンカ、ベビーパウダー風の甘さと混じ合うため、シャープな印象は薄れている

最後はオリス中心にサンダルウッドとムスクが肌の近くにひっそりと残った

このブランドはオリスの使い方が好みで、Pらしい香り立ちと優しい雰囲気が素敵

Erawan/ Dusita

Dusitaのエラワンは、青々としたハーブと日当たりのよい場所で茂る乾いた柔らかなヘイがふんわりと漂ってスタート

粒度が細かく圧も控えめで、自然ながらワイルド過ぎず整った印象

よく嗅ぐと、ハーブとヘイの中にベチバーのドライなアーシーさやクマリンとムスクの間のような質感と甘さが混じっている

その後大きく香りは変化せず、ハーブの青々しさが際立ったり、軽く苦みを含んだタバコが感じられたり、涼しげグリーンなミュゲがハーブに混じったり、ナッツ様の質感に傾いたり、ニュアンス豊かに揺らいでいた

クマリン調の甘さには次第にバニラが混じり、草の奥で滑らかな土台として全体を繋いでいる

時間が経つにつれてバニラの甘さと木のバルサミックさが目立つようになってゆき、最後は軽くアロマティックな要素を加えたバニラ+クマリン+ムスクが肌に残った

「野原の香り」は私の惹かれがちな香りのひとつで、ハーブの持つアニス香やグルマンな甘さを強調したものも多い中、際立って奥ゆかしく上品

自然の気配があり気負いなく纏え、シンプルだけど特徴があり、上品で洗練されているバランスのよさが気に入っている

エラワンは私の肌だと冬はまるで香りが立たず、気温が上がるにつれて香りが柔らかく広がるようになるという不思議な香りでもあり、最近暑くなってエラワンの季節がやってきてうれしい

No 02 L`Air du Desert Marocain/ Tauer

タウアーのNo 02 L`Air du Desert Marocain(モロッコの砂漠の風)

付けた瞬間にタウアー特有のオポポナックスっぽい柔らか軽やかスモーキーな樹脂が広がった

すぐにハーバルな草の鋭い層が重なり、レモン系シトラス要素が軽い湿度と共に滲み出てくる

追い重なるようにラベンダーの薬草らしい部分も登場

さらにシトラス部分はいつの間にかジャスミンに繋がってゆき、ラベンダー要素の後ろから青々としたベチバーが現れ、ジャスミンとベチバーが前面で鮮やかに香り出した

くるくると表情が変わりながら、柔らかく重くならない樹脂が常に土台部分を支えており、全体ではスモーキーでアロマティックな印象

少しすると、ジャスミンとベチバーの後ろで香る樹脂にトンカ調の丸い甘さが混じっていく

さらにジャスミンはハーバルな層に溶け込み、ベチバーはワントーン暗くアーシーになって樹脂と合流していった

その後しばらく、スモーキーで控えめな甘さの樹脂にアロマティックな甘さを持つ層が薄く重なって香る

樹脂は軽やかで柔らかな質感のまま、段々と中にトンカとバニラ様の甘さが強く感じられるようになってゆき、樹脂が全体のメインに

しかし甘さは煮詰まる前に引き返し、代わりに樹脂の中にホットなスパイスとシダー調の木が混じって、熱を帯びたドライなウッディ香になった

質感のおかげか刺々しさはない

最後はハーブの清々しいニュアンスを微かに含んだタウアー特有の樹脂メインに戻り、しばらく軽やかに漂ったあと肌には土の甘さが残った

気負いなく纏える各要素の自然そのものっぽさや樹脂なのにベタつかず軽やかな質感、くるくると表情を変える大胆で繊細な変化の仕方など、今の季節と気分にぴったり

Bond-T/ Sammarco

SammarcoのBond-T

最初アニマリックなウード様の香りが一瞬鼻に届く

すぐに苦くダークでアーシーなパチュリの地塗りの上に、燻製香の強い鰹節の香りが濃く重なり、ウードはその中に溶け込んでいった

ヨーロッパのスーパーで売っている粉っぽくくすんだ質感のチョコレートの苦みと甘さもチラついている

少しすると鰹節はドライでくっきりしたレザー調の明るいタバコへと変化した

よく嗅ぐと仄かなフルーティさが混じっており、公式サイトを参考にすればオスマンサス由来だろうか

その後深い甘さの漏れ出すパチュリの墨汁香が目立つようになり、レザー・タバコと共に香りの中心を構成するようになった

ヘイが持つ弾力あるクマリンが丸さと控えめな甘さを添えている

拡散する香りの中には、ワントーン暗くスモーキーなレザーとウッディなミルラ、ドライなアンバーグリスのニュアンスが明確に感じられた

次第に明るく乾いた樹脂が強くなり、時々混じるバニラと共にグルマンではない甘さとして目立つように

最後は香ばしいサンダルウッドと粒子状の薬っぽい苦みを含んだパチュリ、乾いた甘さのアンバーグリスと樹脂、微かなヘイとバニラがカラリと力強い広がり、次第に輪郭がボヤけて柔らかく肌の近くを漂うように残った

チョコレート香るグルマンというより、ひねりの効いたタバコアンバーパチュリという趣

Patchouly Indonesiano/ Farmacia SS. Annunziata

Farmacia SS. AnnunziataのPatchouly Indonesiano

初めにアーシーながら瑞々しい墨汁のようなパチュリの中から柑橘系の爽やかさが弾け、少しすると奥にチョコレート様の苦みと仄かな甘みが感じられるようになった

パチュリと他の香りを組み合わせたというより、パチュリが表情を変えていくような印象

深く落ち着いた香りながら、質感は瑞々しく透明感がある

しばらくするとチョコレートの苦みは消えてゆき、代わりに森林を歩くときに感じる青緑色のアロマティックな香りが濃厚な墨汁に溶け込んで滑らかに広がった

土や花の持つ芳醇な甘さも混じっており、かわいらしい印象はないが全体的に甘みは強い

その後カンファー調の清々しさとアンバーのニュアンスを含む乾いたウッディトーンが引き立ち、軽やかでシャープな印象に

次第に落ち着いたウッディなパチュリへと傾いてゆき、低く長く香りが漂っていた

ニュアンスに富み、透明感と深み、軽やかさが心地よいパチュリを堪能できる

個人的ベストパチュリ

LYS MEDITERRANEE/ FREDERIC MALLE (Twitter+α)

フレデリックマルのリスメディテラネ

最初は瓜っぽいアクアティックな青さとサンバック系爽やかなジャスミンを含んだミュゲ系のすっきりしたリリー

少しするとリリーの奥に土っぽい野菜の搾り汁のような苦みが感じられるようになった

その後カーネーション系のスパイシーなフローラルと暗くて軽いアンバーニュアンスがリリーに重なる

奥で燻っていた苦みは、海辺の砂浜のようなオゾンと土っぽさを含む独特の香りと化学的で半透明な質感に変化してゆき、瑞々しいリリーと並ぶほどに強くなっていった

しばらくオゾニックなリリーが続くのだが、いつの間にか軽やかなバニラ・ココナッツ様の質感のチュベローズが現れ、リリーを覆い始める

チュベローズとともにインドリックなニュアンスがありながら妖艶になりすぎないジャスミンが登場し、逆にオゾンは目立たなくなっていった

その後チュベローズがメインになり、最後はバナナっぽい甘さと質感を含んだチュベローズと微かなミュゲ系リリーが長く漂っていた

シンプルながらおもしろい香り

CASABLANCA/ St. Clair Scents

St. Clair ScentsのCASABLANCA

最初に広がるのはフレッシュで鮮やかで水彩の透明感を持つ柑橘

よく嗅ぐとピンクグレープフルーツの爽やかな甘さが感じられる

少しすると果実の甘さとポテっとした質感が水彩の中に控えめな重さとして混じるようになった

その後柑橘要素を含むクリアなジャスミンが中心に

贅沢にもジャスミンを地塗りとして、青さとバナナ香を含む鮮やかなイランイランが次第に重なっていく

追ってバニラの甘さが現れたと思ったら、フラカ系の華やかなチュベローズがイランイランと共に咲き誇るようになった

このブランドの花と果物は鮮明で透明感と柔らかさがあり、重みのある香りも軽やか

段々とイランイランとチュベローズの上にオークモスらしきマットな膜が極薄く重なり、ジャスミンの地塗りにシベット様の動物的なエグみとベンゾインやラブダナムなど樹脂のベタつき、カストリウムの毛並感が混じるようになる

しばらく花と動物と樹脂が続き、最後は動物的なベタつきが長く肌に残った

St. Clair Scentsは他にFirst Cut、Frost、Gardener's Gloveを試し、比較的インドール控えめながら濃く華のあるジャスミンが白眉

恐らく100%天然香料ではなさそうだが、凝縮されたクリアな生の植物の香りを材料に香水として構成したような印象があり、室内疲れしている今、個人的に好ましく癒される

Phloem/ Jorum Studio

Jorum StudioのPhloem、いつにも増して好みな香り方をしたため書き残しておく

ピーチ様のフルーティ要素は薄くココナッツよりあっさりしたクリーミーさのチュベローズにベリーの甘酸っぱさを足したクリーミーフルーティフローラルの上に、ガツンと濃い塩水の汗ばんだ肌のような塩気が重なってスタート

塩水はムスクの高密度な空気で包まれており、塩気は粒子の細かいクミンのようにスパイシーに感じた

少しずつ濃い塩気は薄まってアンバーグリスの塩感と磯っぽさへ変化し、代わりに感じられるようになった「化学っぽい」軽さが潮風のよう

その下では引き続きクリーミーフルーティフローラルが続いている

潮風は次第に針葉樹のアロマティックさをチラつかせ始め、わずかな間だけワサビのような刺激が顔を出した

下を流れるベリーはパッションフルーツの明るく軽く熟れた果実へと変化し、フルーティフローラルは微かに重さ厚さを増している

ワサビが去るとアンバーウッディ調となり全体が微かにスモーキーに

さらにアンバーはセサミの焦げたような香ばしさと軽い苦味に変化し、アンバーグリスと混じり合っていった

同時にチュベローズはシトラスを含む爽やかなジャスミンパッションフルーツはストロベリーになり、アーモンドミルクのほの甘い滑らかな層に重なってアンバーグリスと香ばしさの下を支えている

その後ジャスミンは空気に溶け込み、部分的に抜き出すと苺に砂糖とミルクをかけたような香りに感じられた

その上では塩気がぶり返し、メタリックな潮の刺激と粒子感、時々セサミの香ばしさが波のように揺らいでいる

いつの間にか下を流れる苺ミルクは甘く優しいクマリンヘリオトロープに変化していた

最後に近づくにつれて塩気と甘みはセサミとアンバーを介してぎこちなくも溶け合い、アンバーウッディに樹脂っぽい甘さ+アンバーグリスとなって圧力を弱めていった

公式サイトを見ると、たしかに感じられたジャスミンもチュベローズも香りの構成要素にはなく、それらしき別のホワイトフローラルもない

載っている聞き慣れない植物の詳細を調べていくと、ハニーサックルジャスミン、メドウスウィートはピーチなど、ゴースはココナッツ…とそれぞれ共通する香気成分を含んでいるよう

あくまで素人の推測だが、それらを嗅ぎ繋いでいくことで、ジャスミンやチュベローズ(の幽霊)が認知されたのではないか

調香師Euan McCallは、過去作などから察するに、ある植物を成分単位に分解し、一要素を突き抜けさせたり分解された他の植物の成分と組み合わせたり、ある意味機械的にパズルを解くようにして違和感や不可思議さを取り込みながら香りをつくる傾向があるよう(故に私は彼をマッドサイエンティストと呼ぶ)

だから意図的な幽霊である可能性は十分あるように感じる

そう考えると、彼がPhloemをassemblageと呼ぶのは、甘さと塩辛さの組み合わせであると同時に、香気成分単位での寄せ集めだからとも読める

ちなみにPhloemはNectaryとペアリングされており、Nectaryは私の肌だとローズとウードとアニマルがメイン

ローズとウードとアニマルに、Phloemのアンバーグリスとベリーとアンバーウッディフローラルとは、どこかで聞いたことがあるような組み合わせだと気付いた

まるでふたつのパズルのピースが噛み合いひとつの香りが出来上がるよう

こんなところにも彼の計算の跡が見えて、怖くておもしろいと思ってしまう

Lustre/ Hiram Green

Hiram GreenのLustreは、公式にもある通りほぼローズのソリフラワーなのだが、表情が独特で豊か

まずはローズウォーターのように瑞々しい質感でスタート

シトラスの爽やかさとオイリーでハニーのような花粉の甘さを含む軽やかハーバルなローズで、クローヴ調のスパイシーさがザラつきとして感じられる

水のような質感は保ちながら、ハニー様の甘さとオイリーさは高まってゆき、併せてスパイスのザラザラした異物感も強まるのだが、頂点を超えると一気に融解してベルベットのように滑らかな質感のローズらしいローズ香へ変化していった

パチュリや木など重心を下げる要素はなく、重くならず軽やかなまま

最後はローズが再び花粉様の甘さに分解され、肌に花の汁が染み付いたように饐えたような甘酸っぱさがべったりと残った

香水というより「自然派アロマウォーター」スレスレながら、ある程度の持続力と強さはある

あと、この系統の優美すぎないハーバルなローズは個人的に好きなローズの表現なのだと思う

Walimah/ Areej le Doré

Areej le DoréのWalimah

最初に感じるのは薬っぽい苦みにオレンジブロッサム様の艶のあるフローラル、明るいアンバー調の甘さで、タバコのようなドライで明るい枯れた葉のニュアンスで全体が落ち着いている

その中を潜っていくとチュベローズのクリーミーでガスっぽい層が奥に潜んでいることに気付いた

拡散する香りの中に時々チョコレートの甘さも

オレンジブロッサムや苦み、微かなチュベローズは残りつつ、次第にチャンパカやジャスミンが目立つようになり、質感はクリーミーに寄っていった

香り高い茶葉のようなタバコも強くなってゆき、褪せたベチバーとともに軽やかな落ち着きで全体を支えている

段々とチュベローズの濃厚な甘さとクリーミーさ・イランイランの分厚く影のあるフルーティさ・ナルキッソス様の少し苦みを含んだ強い質感・それらの交点にあるマグノリアで構成されたフローラル、タバコやベチバーのアーシーさ、ココアのパウダリーな甘さが混じり合い自然な甘さと渋さの両立する香りに

よく嗅ぐとアロマティックさとスパイシーなザラつき、蜜の甘みを含んだ針葉樹様の香りが奥から感じられてくるのだが、ある種のウードだろうか

それまで目立っていたフローラルやタバコは控えめな針葉樹様の香りに淡く溶け込んでゆき、全体はフワフワ白いファーのように柔らかなムスクに包まれていった

最後肌に残ったのはアニマリックなムスクの汗ばんだ肌のような湿度と誘うような甘さ

Areej le Doréは、調香の人為は感じるのに香水というより素材を凝縮して集めたような洗練されすぎないワイルドさがありおもしろい

タバコがよく効いており、南国調の花と合わせた甘渋いバランスは私の大好物でもある

Soleil de Jeddah/ Stephane Humbert Lucas 777

Stephane Humbert Lucas 777のSoleil de Jeddah(ジェッダの太陽)

最初はラベンダーにも通じる薬草のザラザラ感と苦みが、花の蜜のような濃い甘さに漬け込まれ、押し出し強く鼻に届いた

甘みは強いが薬草のおかげでしつこくない

少しすると蜜の中に熟れたマンダリンのフルーティさがチラつくようになる

追って全体に鉱物的なアンバーグリスのヴェールがかかり、甘さはありつつも硬質な印象に

次第に軽く渋みを含む明るい紅茶が奥から流れ出てきて、シロップで甘く味つけたカモミールティのような趣になった

薬草は次第に金属的で薬品のような鋭さを帯び、アンバーグリス同様甘くなりすぎるのを防いでいる

しばらくすると背景にクラリセージのあたたかな草の香りが安定して感じられるようになり、さらにオスマンサスの軽い柑橘果実香を含んだフローラルが重なる

オスマンサスはカモミールとグラデーションのように馴染んでいるのだが、時折オスマンサス単体が広がることも

全体では甘めハーブ入り紅茶のよう

以前より細かく砕けキラキラした鉱物のようなアンバーグリスと薬品香が重なっており、甘さと硬さ・鋭さが同居している

次第にお茶はタバコとハムのような肉感のあるレザーへ変化し、タバコはよりスモーキーに、レザーはバーチタール様の強さを増していった

その中で植物的なバニラの甘さも揺らいでいる

これで最後かと思いきや、熟し過ぎたようなアプリコットの甘さがレザーとタバコを背景にとろけだし、その上をパウダリーなオリスが薄く柔らかい層を成して覆った

最後はアンバーウッディベースに焦がし砂糖のようなお菓子の甘さが残る

アロマティックな心地よさや甘すぎず意外性のあるバランス感が好み

Koh-i-Noor/ Areej le Doré

Areej le DoréのKoh-i-Noor

最初はバナナ様の香りと粘りを含むイランイランやフランジパニ、マグノリアなどの南国調フローラルに、埃っぽい甘さが下から勢いよく湧き上がるように重なる

香ばしくクリーミーなサンダルウッドの地塗りに支えられ、Plumeria de Orrisと共通する粉っぽい膜がかかっている

量を多めにつけるとスモーキーなアンバーが低く力強く香り、層を厚くしているよう

奥深くに動物的すぎないウードの揺らぎがチラつくことも

少しするとアンバーはアクセント程度になり、イランイランに爽やかなジャスミンクリーミーなサンダルウッドが中心に

パウダリーな膜も少しずつ薄くなっている

花にはフレッシュなレモンの酸が混じり、より全体の軽さを増しているよう

よく嗅ぐとチュベローズで感じるガソリン臭が奥深くで薄く香っている

その後しばらくして花が空気に溶け込んでゆくと、こっくり香ばしいサンダルウッドが目立つようになり、力強いお寺のお香そのままの香りが肌の上で漂うように

動物的なベタつきを軽く含んだムスクがサンダルウッドの中に垣間見えることも

纏ってから数時間経ちほぼ香りが抜けた頃、モフモフしたあたたかみのあるムスクが肌に染み付いて残っていた

よい意味で技巧的な香水らしさがなく、圧の強い天然素材を詰め込んだような仕上げ方と香油のような濃さが楽しい

ちなみにこの香りはPerfume Guruという名で知られる所謂香水インフルエンサーのアイデアをAreej le Doréが実現する形で生まれたとのこと

この方のYouTubeはおもしろいのでよく観ている

アルチザンウード沼が私を誘ってくる…

https://www.youtube.com/user/gobarboss